革製品のボールペン汚れは自力で対処しない方がいい理由|プロにお任せできれいに

大切な革製品(レザー)のアイテムにボールペンの汚れがついてしまった経験はありませんか?そのボールペンの汚れが付いてしまったバッグやお財布がもしも買ったばかりだったら…奮発して購入したブランド製品だったら…かなりのショックですよね。
ボールペン汚れが付いてしまったらすぐに対処が必要です。そうなると多くの方が思わず自分で何とかしようと家庭での応急処置を考えがちですが、もしも長くそのアイテムを使いたいのであればちょっと待ってください。知識や経験がない中で自己処理をすると状況が悪化してしまうこともよくあります。
このコラムでは大切なレザーアイテムにボールペン汚れが付いてしまった時に自力で対処しない方がいい理由とプロに任せるメリットをご紹介します。ボールペン汚れはよくあるトラブルですが、だからと言って汚れが落としやすいというわけではないのです。プロの技術を活用して、ペン汚れができてしまったあなたの愛用品をきれいな状態にしていただけたら嬉しいです。
それでは行ってみましょう。
実は非常に多いボールペンのシミトラブル
仕事用のバッグが革製品という方は特に、ボールペンがあたってバッグや手帳などにインク汚れが付いてしまったという経験をされた方も少なくないのではないでしょうか。革製品の修理や補修を扱う修理専門店には、たくさんのボールペンの汚れに関する相談が寄せられています。特に多いのが以下のようなケースです。
・バッグの中でペンのキャップが外れてしまった
・仕事中、デスクワーク中に誤ってバッグや財布に線を引いてしまった
・ペンがインク漏れを起こしてしまった
・子どもが気がついたら落書きしてしまった
これらは日常的に起こりうるアクシデントであり、決して珍しいトラブルではありません。完全な予防は難しいかもしれませんが、万が一汚れが発生した場合にはすぐに対処を心がけておいてください。
ボールペン汚れは自力で落とせるのか?

結論から言えば、ボールペン汚れを安全に落とすことは極めて困難です。インターネット上には様々な対処法が紹介されていますが、素人が行う自己処理は危険ですのでおすすめしていません。その理由としては例えば
・ボールペンのインクは革の繊維深くまで染み込む性質がある=落ちにくい性質あり
・市販の染み抜き剤では完全な除去が難しい=市販では対処が難しい
・革製品それぞれで適切な処置方法が異なる=誤った方法で処置すると取り返しのつかない事に
もちろん運が良ければボールペン汚れを落とすことができるかもしれませんが、バッグやお財布の状態が悪化してしまうリスクも充分にあります。
革製品についたボールペン汚れを自力でどうにかすると起こり得ること
自力での対処を試みると、以下のような深刻なトラブルに発展する可能性が高くなります。リスクを知った上で自己処理を選ばれる方が後悔は少ないはずなので、起こり得る事態も紹介しておきます。
◼︎革の変色や変質
市販の染み抜き剤や漂白剤を使用することで、革本来の色が抜けたり、素材が硬化してしまったりするケースが多々あります。特に、アルコールや強アルカリ性の成分を含む製品は革の繊維を痛め、タンパク質を変性させてしまいます。一度変質してしまった革は、補修をしても元の風合いを完全に取り戻すことは困難です。また、部分的な変色は周囲との色むらとなり、かえって目立つ結果となってしまいます。

◼︎革の表面損傷
こすり過ぎることによって革の表面が傷つき、さらなる補修が必要になることがあります。消しゴムやブラシなどで強くこすると、革の表面加工が剥がれたり、傷がついたりします。特に、スムースレザーやエナメル加工の革は傷つきやすく、表面の光沢が失われると復元が非常に困難です。また、傷ついた部分は経年劣化も早まり、亀裂や剥離の原因となることがあります。

◼︎シミの広がり
不適切な洗剤の使用により、かえってシミが広がってしまうことがあります。特に水性の洗剤を使用すると、インクが溶けて周囲に染み出し、当初よりも広い範囲が染みで覆われてしまいます。また、洗剤の残留成分が革の内部で化学反応を起こし、時間の経過とともにシミが徐々に広がっていくこともあります。一度広がったシミは、もはや部分的な修復では対応できなくなってしまいます。

◼︎修復不可能な状態に
最悪の場合、プロでも修復できないほどの損傷を与えてしまう可能性があります。特に強い溶剤や漂白剤を使用すると、革の繊維が完全に壊れてしまい、もはや革としての機能を失ってしまいます。また、複数の異なる製品を組み合わせて使用すると、予期せぬ化学反応を引き起こし、革が溶けたり、表面が完全に剥離したりするなど、取り返しのつかない事態となることがあります。このような状態になると、直すのではなく買い替えを検討せざるを得なくなります。
プロが行う「ボールペン汚れ」の修理でお気に入りのアイテムを蘇らせる
ここまでで「ボールペン汚れを自力で対処しない方がいい」理由はお分かりいただけたのではないでしょうか?では、プロにお願いすることで何が素人とは違うのかもご紹介します。
革製品を数多く修理している修理専門店などに在籍するプロの職人たちは、革の種類や修理したいバッグや財布の状態、インクの性質を見極めながら、クリーニングや色補正などのボールペン汚れをきれいにするための最適な処置を選択していきます。
修理における適切な選択こそがボールペン汚れをきれいに取り除くために重要なのです。それぞれ詳しく見ていきます。
プロが行う「ボールペン汚れの修理」は大きく分けて2つ
プロの職人が行うボールペン汚れの修理は、大きく分けて以下の2つの方法があります。
・汚れ落とし
・染め直し
修理をしたい革製品の状態や汚れ具合などによって細かなステップは異なりますが、基本的には汚れ落としをし、それでも落ちない場合に染め直しを行うという手順が一般的です。
◼︎汚れ落とし(クリーニング)でインクを落とす
ボールペン汚れを落とす際のプロによるクリーニング作業は、高度な専門知識と技術を必要とする繊細な工程です。まず、革製品の種類や状態を細かく観察し、それぞれの特性に合わせて最適な薬剤を慎重に選択していきます。その際に、革本来の風合いを損なわないように入念な判断を行います。
軽度のインク汚れであれば、汚れ落としの段階できれいにすることも可能ですが、ボールペンが付いてから時間が経ってしまったり、深く浸透してしまった場合には汚れをきれいに落とすことができない場合もあります。
◼︎取れない場合は染め直し(色補正・補色)

汚れ落としが困難なケースでは、染め直し(色補正・補色)によって修復を行います。方法としては、ボールペン汚れができてしまった箇所に、元の革と似た色を付け染め直すという方法です。
この染め直しにおいては正確な「色づくり」「色合わせ」が非常に重要です。職人の経験と技術が大きく影響し、目で見分けられないほどの微細な色調整をプロが行い、革製品に塗布していきます。状況に応じて、ボールペン汚れの箇所のみの部分的な補色から、バッグ全体の染め直しまで対応することも可能です。もしも希望がある場合には修理相談時に伝えておくのが良いでしょう。
【事例紹介】修理専門店のボールペン汚れ修理
それでは、ここからは修理専門店REPAIR THING(リペアシング)に寄せられた実際のボールペン汚れの修理の事例を見てみましょう。
1、LOEWE(ロエベ)のボールペン汚れ(ハンドバッグ)

バッグにボールペン汚れができてしまったため、どうにかしたいとご依頼を受けたものです。よく見てみると、ボールペン汚れができている付近の革の色が白くなっています。おそらく自己処理をしようとしたことで革の色が変色してしまったのでしょう。
この場合には、汚れを落としたとしても色落ちしている革の色味も調整が必要なため、染め直し(色補正・補色)を行っております。

どこにボールペン汚れがあったのか分からないくらい、きれいになりましたね!
2、BOTTEGA VENETA(ボッテガ・ヴェネタ)のボールペン汚れ(お財布)



ボッテガグリーンが輝くお財布ですが、ボールペンで外側やスナップボタンを開けたところまでインクが付いてしまっています。また、こちらもスナップボタン付近の色味が変色しています。この程度の軽い変色であれば染め直しで対処が可能ですが、自己処理でどうにかしようとして状態が悪化するケースもよくあります。ブランド製品であればなおのこと、失敗した場合のリスクやショックが大きいため、プロにおまかせいただく方が賢明と言えます。



ボールペン汚れが付いていなかった裏側の変色も補色できれいになりました。汚れの種類が違う場合、自分で対処するには2倍、3倍の知識や修理のための専門用具が必要になり、それだけで時間的にも金銭的にもコストがかかってしまいます。プロにお願いすることで、自力で行うよりは高価になる可能性もありますが、その分「お任せしてよかった!」と思える仕上がりで戻ってくる可能性が高いですよ。
3、CHANEL(シャネル)のボールペン汚れ(ショルダーバッグ)

ボールペンの線が見えるラインもありますが、色移りをしてしまった汚れも見えますね。またその他にもバッグの艶がなくなっている箇所もあるため、修理の依頼をいただきました。

ボールペン汚れがどこにあったのか分からないくらいきれいになりました!バッグ全体の艶をあげるためにもバッグ全体の補色をしています。
4、CHANEL(シャネル)お財布・ウォレットのボールペン汚れ

お財布の状態としてはパイピング部分がひどく擦れており、内側が見えてしまっています。ボールペン汚れもハッキリと残ってしまっているので、きれいにしたいとご依頼を受けて修理を行っています。

ボールペン汚れはもちろん、破れかけたパイピング部分まできれいに補修ができました。上から補色で塗り直し、できるだけ修理したことが目立たないように行っています。ボロボロになってしまって「もう捨てるしかないかな…」と諦める前に一度リペアシングにご相談ください。状態によってはきれいにお直ししてまた使い続けることができるかもしれませんので、諦めないでくださいね。
5、【ブランド名】【バッグの種類・シリーズ】のボールペン汚れ

バッグの端の方にボールペンのラインが入ってしまっています。

パッと見ただけではどこにペン汚れがあったのか分からない状態になりました。しかし、こちらのアイテムのように染め直しで上から色を被せておりますが、ボールペン汚れがうっすら残ってしまうこともあります。ペン汚れがあったことを覚えているご本人でしたら気がつくかもしれませんが、ほとんどの場合気にならない状態です。革の種類や色味によっても修理結果が異なりますが、できるだけ元の状態に近い色味になるように職人が丁寧に色づくりをして修理を行っています。
圧倒的にボールペン汚れは染め直しで対応することが多い理由

実はボールペンの汚れに対しては「染め直し(色補正・補色)」で対応することが多くなっています。理由としては、
・染め直し(色補正・補色)なら、クリーニングでは完全な除去が難しい場合でも目立たなくすることができる
・時間が経ってしまった後でも対応できる可能性がある
・革の風合いを守った修理ができる
などです。
特にボールペン汚れができた際にすぐに修理に出される方は少なく、時間が経ってから「ずっと気になっていたので…」と持って来られる方がほとんどです。ボールペン汚れは時間が経つことでさらに汚れが落としにくくなってしまうため、最終的に染め直しの対応になるということも少なくありません。また、染め直しは万能ではなく、革の素材や色味によっては汚れを完全に目立たなくすることができない場合があります。いずれにしても汚れた際にすぐに相談することで、希望の状態に戻せる可能性が高くなりますので、お早めにご相談ください。
【その他】バッグ内側のボールペン汚れ・ペンしみは落ちません
バッグの内側に付いたボールペン汚れについては、外側の汚れよりもさらに対処が困難です。
理由としては、
・内側の革は外側と比べて柔らかく、インクが深く染み込みやすい
・裏地が付いている場合、完全な処理が物理的に困難
・内側は外側より染色がデリケートで、クリーニングによる色落ちのリスクが高い
このため、内側のボールペン汚れについては、あまり気にせず使用を継続する方も多くいらっしゃいます。もしくは「内装交換」を行うという選択肢もあります。バッグの状態や形状によっても対応ができるかどうか異なりますので「どうしても内側のボールペン汚れが気になる!」という場合には一度ご相談ください。
自力で失敗する前に、ボールペン汚れはプロにおまかせ

いかがでしたか?ボールペン汚れは思った以上にプロの技術や経験が必要ということもこのコラムで分かっていただけたはずです。お手持ちのブランド製品、革製品のボールペン汚れは自力で解決するのではなく、まずプロへの相談がおすすめです。
そうすることで時間が経てば経つほど取れにくくなってしまう革のボールペン汚れのトラブルを一気に解決することができるでしょう。高級なもの、思い入れがあるアイテムであればよりプロの力を借りることが末長く美しく使用し続けるためには大切です。
ご自宅に眠っているボールペン汚れがあるバッグ・お財布がありましたら修理専門店リペアシングまでご相談くださいね。
店舗名:ブランドバッグ修理 REPAIR THING
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