女性の手に職を。|女性が輝くリペア工房『リペアシング』店長・松本唯さん
リペアの世界との出会い
今日はよろしくお願いします。では最初に松本さんがリペアシングに入る前に、リペアの世界に入ろうと思ったきっかけを教えてください。
リペアの世界に入ろうとしたきっかけですが、元から服飾の専門学校を出ていて、そこから、最初は洋服のお直しをしていました。その洋服の直しをしている時に『革の修理の方もできないか』という相談が何件か、ずっとありまして。ただ、「革のお直し」となると、どうしても洋服のお直しとか縫製とはまた別の色染めだったりと別分野になるので、ずっとお断りしていたんです。
でも「これだけ声があるのに、なんかお断りするのもったいないな…」と思っていました。そんな時に革の修理関係のお仕事をしていた友達から『ちょっと縫製について色々聞きたい』という連絡がありまして。
『革の縫製でなくて洋服のことでも全然いいから、縫製についてやミシンについて聞きたい!』と言われたので、縫製について話していたのですが、そのことがきっかけで『ちょっと一緒に手伝ってくれないか』と声をかけてもらって革の業界に行くことにしたんです。
それは転職ということですか?
はい、転職という形で。せっかくお客様から声もあるし、革も覚えたいなって。
なので相談がきっかけですね。
ちなみにお直しの方に最初に入ろうと思ったのはどうしてですか?お直しではなくても、服飾ならデザイナーさんにつくとか、いろんな選択肢があるなと。なぜそれを選ばれたんですか?
昔から古着だったりとか「古いものを良くする・あつかう」っていうのが好きだったんです。高校生の頃もクリーニング屋さんでアルバイトしたりしていました。
一筋ですね。
そうですね、はい。新しいものを売るとか、作るとかっていうよりは、洋服とかファッションでも「古いものをどう活かすか」というのをやりたいなってずっと思っていたのもあります。
さすがですね。どのタイミングでそういうスイッチが入ったんですかね?
そうですね、クリーニング、洋服は昔からずっと好きだったんですが、作ったりするのは中学生の頃からですね。ミシンで中学生の時に初めてジャケットを作ったりとかもしていました。
すごいですね!例えばお友達とか、お母様とか、影響を与えた人物がいたりするじゃないですか。松本さんの場合は全然そういうのはなく、自分から『やりたい!』となったのでしょうか?
いや、自分からというわけではなく祖母の影響ですね。祖母は自分の洋服は自分で作っていまして。それで小さい頃から私の発表会があると洋服作ってくれたり、結婚式があると可愛いワンピース作ったりしてくれていました。
そうなんですね。やっぱりご家族にもいらっしゃるものなんですね。
キャリアの始まり、リペアシングに入るまでの道のり
続いて、リペアシングに入る前から現在に至るまで、どんなキャリアを歩まれてきたんでしょうか。
まず、最初の会社に入った時にバッグのメンテナンスについて学んで、その後に修理をメインとしている業者さんに転職しました。
そこでWeb制作を手伝っていたうちの会社の社長に出会ったんです。社長のところはWebだけではなく、クリーニング業界でやっていて、『革製品の事業をこれから自社で持っておくとすごく需要が上がってくるよ』と言っていて。そういうことで自社で革の事業を持つことにしたところに誘われて入った、という形になりますね。
革のリペアと出会ってから今に至るまで、どのぐらいの時間が経っていますか?
広島に来たのがもう7年目なんで、7年前に。
なるほど。昔ながらのものは元々あったと思うのですが、こういうウェブ業界のサービスのリペア産業って割とまだ若い業界じゃないですか。リペアで7年ってことは、多分このジャンルで言うとキャリアハイなんでしょうね。
そうなるかなとは思いますね。
先ほど言われていたリペアシングに入るきっかけになったのは、今の社長から、そういう今のニーズが上がるから一緒にやらないかっていうことでしたよね。その時点では「リペアシング」はないんですよね?
ないです。はい。
それで『じゃ、やります!』となってからブランド名を考えようとなり、名前が「リペアシング」になりました。
そうなんですね!リペアシングのリペアも分かりやすくて良いですが、シングって「こと」を表す言葉ですよね。なんかワードが広い定義でいいですよね。
そうですね。社長も革に限らず「ものごと」という形でおそらく色々派生を考えてたみたいですね。
なるほどですね。ありがとうございます。
リペアの面白さ・魅力
他業種から革製品を扱ったり、リペアに入られたりして、想像と実態って色々ギャップがあったりするかもしれませんが、松本さんはリペアの面白さをどのように感じていらっしゃいますか?
そうですね。まず、色を塗ってあれだけスレが蘇るっていうのは、本当に快感というか。面白くてすごいなって思いました。
私は今まで縫製のお直しで、切ったり縫ったりというのがメインだったので、「色を塗って蘇る」というのが革の魅力でもあるなという風に思いました。布にはちょっとない魅力だなっていう。
確かに。どちらかというと布は形とかですもんね。
革のリペアに来た時に『ここ全然違うんだ…!』と思ったところがあったりしますか?
革の場合は「塗る技術」なので、色を元の色に合わせたりとか、初めは本当に時間がかかってしまっていました。
それは…経験を重ねたら、できるようになるものなんですか?
そうですね、はい。感覚的なものもあるとは思うんですが、やっぱり経験を重ねないと身につかないものだなと思いますね。
なるほど。リペアした商品だったり、お客様とのやり取りだったりで、松本さんの印象に残ってるものが何かありますか?
リペアシングを始めて最初は中古販売の業者のものをやったり、ずっと B to B でやっていました。フィードバッグを重ねながらする感じでその時のやりがいもありますけど、やっぱり初めて B to C でお客様とあった時ですかね。
そのお客様1人目がもうめちゃめちゃ喜んでくださって。Instagramで問い合わせがあって受けもった修理だったんですけど、それはすごく印象に残っています。
個人のお客様ってこんなに『修理したい!』と思っていて、修理した後のクオリティを見ていただいて喜んでくれるのはすごい嬉しいなって感じました。
個人のお客様をお迎えされたのは結構最近なんでしょうか?
もう4年前になりますかね。1番最初のお客様は本当に印象に残ってますね。
そういう思い出深い出会いがあるっていいですね。
そうですね。どうやって最初のお客様を取ればいいのかも分かっていなかった時だったので、まずInstagramから始めました。それで、Instagramで「一般のお客様も始めました!」とDM送ったことで来てくれて…みたいな感じでしたね。
その方は直接持って来られたわけではなく、送って来られたんですか?
そうですね。送りです。発送してもらいました。
すごいですね。今のネットの時代だからこそですね!そんな時代があったことを考えると、今はすごくたくさんの方がリペアを頼んでくださっているんですね!
そうですね。
リペアシングの特徴「女性だからこそできることは?」
改めてですが、リペアシングの特徴を教えてください。
特徴としては、やっぱり B to B から始まっていることもあり、エルメス、シャネルというような有名なブランドバッグはずっと修理をしてきましたから、そこに関しては修理での強みがあります。
そして修理の際の「色作り」や「色感」というところで、ばっちり色を当てていくというのも他にもない特徴で、強みでもあると思います。
リペアシングは「女性のみのリペアスタジオ」だと思うのですが、これは女性のみで始めようと思って始められたのですか?
いえ、違います。仲間内で始まったというのもありますし、それこそ今の社長と一緒にやりましょうとなった時に、前職で私と一緒に働いてた子たちが『一緒にやりたい!』と言ってくれて。それがたまたま若手の女性だったというのもありますね。
始まりは “たまたま” ではあるんですが、それがお客様からも『女性もののブランドバッグを修理に出すんだったら、女性の方がいいよね』という声を結構いただいていて。それで、私たちが女性のみでやっている強みってこれでもあるんだなというのをお客様から気づかされた感じです。
確かに。女性と男性で全然違いますもんね。
そうですね、色の感覚とかが違ったりなどはあると思うので。
女性のみだからこその色彩感覚だったり、多分に発揮できる力があったりしそうですね。逆に、女性だからこそ力仕事というか、 これはなかなか大変だっていうこともあったりしますか?
そうですね。革を縫うのには結構な力がいるので、そういった面では男性の方が有利だったりはありますが、女性だからできないというわけではないので。
そうですよね。女性だからこそ、できることもたくさんありますもんね。
リペアシングの強みとして「補色」といわれる色作りがあると思うんですが、特に力を入れているところはあったりしますか?
そうですね、先ほどからお伝えしているように、やっぱりうちの「色を作る技術」に関しては他と比べても負けていないなというのはありますね。もちろん他にもいろいろなリペアを担当していますが、今の主力になってる1番は「補色」だと思います。
補色をされる際にはフルリニューアルというよりは、部分的にかけてしまったところを直されることが多いんでしょうか?
部分的な補色もありますし、フルで塗ることもありますね。極力、お客様の要望に合わせてやっています。お客様によっては、予算の関係で本当はフルで塗った方が綺麗なのはわかるけれど、部分だけ、ちょっと目立つところだけを塗ってほしいという方もいるので。そうなった時に、色合わせがすごく重要だなと感じてます。
そうですよね。なんなら、まるって塗った方が良さそうですもんね。
そうですね。やっぱり全部塗り直した方が馴染むので。でも、そういったご要望とか予算に合わせて塗ることもありますね。そういう部分的な補色になってくると、もう本当に色作りが重要になってきますね。
こういう細かいオーダーにもお答えされながら進められるんですか?
一応こちらでは、『フルカラーの方がこういうメリットがありますよ』というのをご説明しますけれど、最終的に選ぶのはお客様なので。『それでも…』というのであれば、 フルカラーでないなら出来ませんとお断りするよりは、メリット・デメリットをしっかり説明して、なるべくは対応していきたいなと思っています。
となると、もうオーダーメイドのやり取りですね…!
そうですね、そういう希望にお応えしていたら、やり取りは密になりますね。
すごい。ほんとに個別対応をされていらっしゃるんですね。
最近は、内装交換もされる方が多いと聞きますけれど、需要が増えてるという感じなのでしょうか?
そうですね。ブランドバッグの中身が「合皮」で作られていたりとかするので、ちょっと長く置かれていたりとか、 長い間タンスの中にあった場合には経年劣化してしまっています。合皮はどうしても経年劣化するものなので、表は綺麗なのに、開いたら中が使えないというのがありますね。パリパリになったり、ベトベトになったり。
それもまるっと内装を換えていくんですか?
そうですね。構造上の問題がなければ換えていきます。
中が換えられるんだっていうところに結構衝撃がありますね!
そうですよね。はい。換えられるっていうことを知らない方もいらっしゃいますね。
ブランドもののバッグって中に柄が入ってたりしますよね。交換する時は同じ柄ではなくて、別のものでされるんですか?
そうですね、別のものでしますね。合皮でまた作成すると、結局数年後に同じことになってしまうので。リペアシングでは内装に適した「シャンタン生地」というちょっと生地の中でも高級感のあるもので交換という形をおすすめさせていただいてます。
なるほど。生地もですが、生地の色とかも選べたりするんですか?
はい、そうなんです。作り替えなので、元の色に近い色を選ぶこともできますし、全くガラッと気分を変えて違う色で作成することもできます。そんなふうに元の色とは違う色を選ばれるお客様もいますね。
それは気分が変わりますね!
リペアで業界で働きたいと思ったら「どんな人が向いている?」
松本さんはどんな人が「リペアのお仕事」に向いていると思いますか?
まずはブランドバッグが好きな人とかですね。好きはすごく大事かなとは思います。
今働いている方達もファッションやブランドで、みんなそれぞれ好きなものやブランドがあったりしますね。
他業種からの転職はありますか?
リペアシングは、ほぼみんな多業種からの転職ですね。私はずっとリペア育ちではあるんですけれど、歯科助手だったりとか、全然違うフリーターとかから入った人もいます。他にもデザイン系の専門学校を出たけれど、やっぱりファッション系が好きでというので入ってきた人もいます。基本的にはファッション好きな人が多いですね。
他はどんな人に向いているでしょうか?
他でいうと色だったり、美術だったりが好きな人ですかね。 色作りやそういったのが好きな人は上達しやすいかなと思います。
あとは、1日中ずっと作業しなきゃいけないっていう仕事でもあるので根気は要りますね。「集中して1人で突き詰めるのが好き」という人も向いてるかなと思います。
なるほど。例えば素人から見て一緒でも、プロが見ると違ったりするじゃないですか。完璧主義だったりとかそういう性質も結構リペアにおいては重要だったりしますか?
そうですね。ただ、神経質になりすぎると逆にその人が苦しむかもしれないですね。こういう業界は。
そうなんですね。あとは目がいいとか、微妙な違いに気づくとかも、ですかね?
はい、そこはそうですね。ただ、それはやってるうちに培われるものでもあるので、初めは「好き」で良いと思います。革が好きなだけでも、やったことがなくても、それでも上達したりするので。
“好きこそものの上手なれ” ですね。ありがとうございます!
リペアシングの新たな取り組み「修復師育成スクール」
今後の取り組みとしてスクールをされると聞いていますが、スクール運営をする目的や、スクール運営をどういう形でするのかなど展望のところを少しお聞きしたいです。
はい。まず、スクール運営の目的としてはやっぱり「一緒に働ける仕事仲間を増やせる環境を作りたい」というのがあります。『求人してます!』と言っても、この業種っておそらく踏み込むことがちょっと…という人も多い気がしていて。
例えばブランドバッグは好きだけど修理をするのはちょっと…みたいな。やったことないしっていうので、 やっぱり踏み込むことができなかったり、初めての人が入り辛い分野なのかなと思った時に、スクールで体験してみて、ちょっとでも『自分でもできるんだ!』という体験や経験を味わってもらいたいなと思っています。
もし興味が出てきて、そこでぐっとのめり込んでくれたら、一緒に取り組みができたらなと。
眺めるのと、触るのも全然違いますもんね。
そうですね。全然違いますし、スクールがあることでリペアに触れるきっかけ作りになればいいなと思います。
興味発掘というところですね。スクールはどのくらいの規模感にしたいなど目指すところがありますか?
目指す形はやっぱり2、3人っていうよりは、もう少し増えてくといいなというのは思っています。それがリペアシングの新たな修理チームを作るような、そういう形に繋がったらいいですね。
まさに今、少数精鋭でやっていて、納期としてお待たせしてしまったりなどもあるので。クオリティにはすごく自信はありますが、そういった納期の面も解消できて、お客様にとっていい影響になればいいですし、お客様の満足度をあげる要因になったらなと思います。なので2、3人っていうよりは、需要に合わせてどんどん増やしていきたいなというのはありますね。
その際の「チーム」というのは業務委託の形でされるというのもお聞きしたのですが、その場合は納期を決めて、その人に修理するバッグをお渡しして、決められた期間内で仕上げてもらって報酬を支払うという感じでしょうか?
はい。そんな感じで考えています。
基本的にフルリモートってことですか?
はい、そうですね。フルリモートでもできます。
じゃあ全国どこでもいいよという感じですね。
リペアのお仕事を業務委託で受けようと思ったら、まずはスクールに来てもらって、色々触れてもらってからお仕事をするという感じでしょうか。
あ、そうですね。まずはスクールに来てもらえたらなと思います。
なるほどですね。もうすでにスクールは始まっているんでしょうか?
そうですね。まずは東京からで、今、実際1名プレスクールさせていただいています。
すでに始まっているんですね!松本さんは広島にいらっしゃいますが、広島にいながらされているんですか?
そうですね。広島にいながらもリモートで写真とかビデオ通話だったりとかでも日々対応していますし、東京の方なので私が東京で仕事がある時や私が出向いた時に、実際直接会って『こういう仕上がりです』というような練習をしている状態です。
アドバイスしながらですね。なるほど。その方のきっかけはSNSか何かを見た上で、だったんでしょうか?
今回は、プレスクールということもあったので社長の知り合いではあるんですが、元からDIYだったりネイルだったりがすごく好きな方で。ブランドバッグも大好きで身近な感じだったみたいなんです。
ただリペアについては『興味はあるけど、仕事にできるのか?』という心配をされていました。それだったら、1度プレで教えるからやってみて、興味があったら業務委託まで行けるように準備してみないかっていう話をさせていただきまして。それで、1回体験したら『面白かったので続けさせてください!』ということで、今スクールに通ってもらっています。
その方は現在、お仕事がありながらも合間でリペアを学んでいらっしゃるんでしょうか?
その方は主婦をされてらっしゃる方ですね。
そうしたら、主婦の方の『やってみたい!』という声がこれから増えていきそうですね。
はい。お家でもできたり、空いた時間にできたりするので、相性はいいのかなとも思います。
メッセージ「手に職をつけることってすごくいいこと」
最後にリペアに興味がある方に向けて、メッセージがあればいただきたいです。
「手に職をつける」ということはすごくいいことだなって思っていて。自分が覚えてしまったら、それはもう誰に盗めるものでもないですし。このリペアの仕事は場所に縛られることもないですし、やり方はいくらでも作れるなとは思っているので。それこそ、リペアシングでは主婦の方もいますし、まだ小さい子を育てている方もいます。そういった主婦や専業主婦の方で、業務委託の方もいますし、本当に様々なので。
1度覚えたら、それこそ「産後復帰」も全然できる職業だなとは思ってるので。それが、リペアシングのオフィスに働きに来るのか、自分の家でやるのかなど選択肢もいろいろあります。女性だからこそ、いろいろできるなと思うので、ぜひリペアに出会って欲しいですね!
可能性のあるお仕事ですね!
松本さん、本日はありがとうございました!
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